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STORY

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女子旅の物語
旅の始まり

― Day1

11:00

突然の結婚報告!?
そして二度目の修学旅行へ。

社会人になって3年。
友人と会う機会がめっきり減っている中、突然高校時代の友人から連絡が入った。

結婚するらしい。

いつかはこんな日が来ることはわかっていたけど。
こういう感覚なんだ。
私の心を先回りして、旅行の提案もしてくるあたりが変わらないな。

SNSでは繋がっていたものの、高校を卒業してからなんだかんだで一度も会っていなかったこともあり、会うまで実は私は少し緊張していた。

でも会ってみると2人ともほとんど変わっていなかった。
レンタカーの車中は高校の想い出話で大盛り上がり。

切りすぎた前髪や絡まってほどけないイヤホン。彼専用の着メロとか。

二度目の修学旅行が始まった。

ドライブ

13:30

慣れないドライブと支笏湖。
これまでとこれから。

新千歳空港から札幌へは支笏湖を経由して向かう。
人生の節目を迎える彼女は意外に冷静で、結婚に向けた準備で忙しいみたい。

支笏湖を見るのは初めてではないが、こんなに大きかったっけ。
名前も知らない鳥が淋しそうに鳴いている。

私たちのこれまでとこれからを語るにはあまりにも世界の廻るスピードが早すぎるんだ。

カフェ

15:30

珈琲の香りに誘われて。

チェックイン開始時間の15時に合わせてホテルに到着した。
駐車場は表と裏に合わせて11台分あり、事前にホテルに電話をかけて1台分確保してもらっていた。

3階建てのこのホテルの1階はカフェになっている。
珈琲の香りに誘われて、カフェで一息つくことにした。

実は私は珈琲が飲めない。
だが、珈琲の香りは好きだ。落ち着く。懐かしささえ感じる。

ここのカフェはメニューが豊富だ。
珈琲が飲めない私でも目移りしてしまうくらいだ。

オーダーした飲み物が来たみたい。写真撮らなきゃ!

ゲストルーム

15:45

案内されたのは小さな美術館でした。

ホテルフロントで渡されたのはiPhoneだった。
ホテルフロントとの通話はもちろんのこと、客室の家電製品のリモコンにもなっているというから驚きだ。

HOTEL POTMUMは開業から3年目に新館をオープンさせているらしい。 今回はその新館のデラックスルームを予約した。 新館は本館の裏にあり、直結こそしていないが徒歩で1分もかからない。

客室の扉をあけてその可愛さに圧倒された。
パステルグリーンの天井と開放的な空間。ナチュラルな雰囲気をもちながら、どこかアーティスティック。 まるで小さな美術館に私たちのテンションは最高潮に達していた。

夜の写真大会

16:00

夜に駆ける写真撮影大会。
エモいの正体。

「エモい写真が撮りたい!」という話しがグループラインで出ていたので“写ルンです”を準備しておいた。
夜の公園ってどうしてこうも魅力的なんだろう。

数十年ぶりに見るシャボン玉はよくみると赤や青、時々緑色だった。
数秒の寿命のために生まれては死にゆくシャボン玉にエモいの正体を視た。

エモいとは”終わり”を感じさせる何かだ。
夕焼けも制服も東京も放課後も恋もプラネタリウムも全部全部その背中に“終わり”がべったりと張り付いている。
旅にもね。

私たちには帰り道が見えなくなっていた。

串さん

17:00

想い出の住む場所。
シャッターを切る理由。

うんと暑い日、一度だけ3人で行った居酒屋さんがあった。
当時はまだお酒が飲めなかったっけ。

「私そんなこと言ったっけ?」という恥ずかしい話しを聞かされる。
記憶が五感と結びついているというのは多分本当だ。

記憶は私の海馬に閉じ込めてられているだけじゃないんだ。
お互いに記憶を保全し合うその境界に想い出が住み着いているのかもしれない。
友情の輪郭が初めてハッキリと視えた。少し多めに写真を撮った。

ホテル女子会

19:00

夜を超える、或いは戻る女子会

ホテルに戻ってからの夜は長い。
周りに人がいては話したくても話せない話しが女性にはあるのだ。
アパートの1室で語らったあの日々を思い出す。

客室内の大きなテレビで事前に同級生から集めていたお祝いム―ビーを流した。あまりにも涙する彼女に私の視界も大きく歪んだ。

涙と一緒に色々なものが流れ落ちた。

サイゼリアもプリクラも前略もカラオケもmixiも全部。
一緒に満員電車とか合わないパンプスとか休憩室とか取り分けトングも。

私たちは子どもみたいにとにかく泣いた。
永遠よりも長く泣いていたと思う。

旅の余韻

― Day2

10:00

エンドロールの後。卒業と上書き。

目が覚めると時計はありえない時間を指していた。

驚いた。
いつ寝たのかも覚えていない。チェックアウトは11時だ。
2人を急いで起こし、大慌てで準備した。
今日は巻かなくてもいいや。

「また一緒に旅行しようね。」
まるで客室に言うみたいに目を合わさずに彼女が呟いた。

私は彼女の目を見て言った。
「当たり前じゃん。次は私の番かな。」

夢に出てくる彼女はこの日以降制服を着ていない。